「記念日や自分へのご褒美としてホテルに泊まりたい」と思っても、ネットの情報だけでは似たり寄ったりでいまいち決められない。
「一般の評価はムラが大きいからプロ視点でおすすめのホテルを知りたい」
そういった方のために、実際に現在進行形でホテルを作っている一級建築士の私が、関東で本当におすすめできる1泊3万円程度の温泉付きホテル(温泉宿)を3つご紹介します!
金額だけの比較ではなく、建築的な面白さや、ここに力を入れいてるホテルはホスピタリティが高いといえる。など、ホテルを作っているプロだからこその裏情報も含めてご紹介していこうと思います!
🏨 箱根小涌園 天悠(神奈川・箱根)
① ホテルの印象
自然とつながる開放感をつくり出す、和モダン設計の温泉旅館。
とにかく自然への融合するためのデザインが圧倒的。
今にも自然に飲み込まれそうなほどの勢いを感じさせてくれる外観に、到着したあなたは最初の感動を覚えるはず。
② 建築ポイント

到着した時の心の高ぶりはエントランスが全て。
受付の屋根高も「あなたを待っていた」と伝えるのに最適の高さです。
天井の高さは高級感を与えますが、高すぎると落ち着きのない印象を受けてしまいます。
さらに、ロビー前の水盤が外景を室内へ引き込む構成となっており、その引き込み効果はあなたをも空間の中へ引き込んでいきます。
自分に驚きの体験をさせてあげたい時や、記念日に最初からお相手を感動させたい時は、エントランスから引き込み力のあるこのホテルがおススメです。

この客室の良い点は、非日常感を感じられる時間が普通のホテルの数倍長いという点です。非日常感とは「普段見えるものが見えない・普段見れないものが見れる」ことによって生み出されます。
この客室の場合、入り口から贅沢な玄関に非日常を与えられるのですが、主室でベッドを見るまでの距離が普通のホテルより長く取られています。
そのおかけで、客室に入った時に覚える感動や心の高鳴りが緩和されてしまうまでの時間をより長く堪能することが出来ます。更に、ゆっくりと中に入ることで、より長い時間非日常を味わうことにもつなげられます!
また、このホテルのポイントは何といっても全室温泉露天風呂付という点。
室内から外に向けて開かれた大開口が“景色の額縁”として機能しており、外部に向けて広がるように伸びた屋根が、「ただ客室露天風呂がある」という”他のホテルとの類似”との差別化を図っています。
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③ 温泉・施設(建築目線)


露天風呂は視線の抜けを綿密に計算し、自然の神秘を最大限に感じられる手法が盛り込まれています。温泉から見渡せる景色は「山の頂上」が見える時と、「山と山の交差する谷の部分」が見える時とでは神秘的さが大きく異なります。
想像は出来るが想像の範疇を超える時に人は神秘的と感じます。
山と山が生み出す谷に夕日が沈むとき、想像しきれない光の芸術が生まれます。その芸術を温泉から眺めらるのは、土地の強みを生かした天才的な露天風呂と言わざるを得ません。(一枚目の写真)
もう一つの露天風呂は、湯船に浸かった状態で最も美しい森を切り取る設計となっています。自然の中に露天風呂を作ることは、衛生面でも清掃面でもかなりのコストがかかるので、このホテルが持つ強い覚悟を感じられます。
多くのホテルが自然の中に温泉を盛り込みたいと思いながらも、その難しさと大変さに諦めていきます。そんな中で、衛生的にも空間的にも綺麗な自然の中の温泉を維持し続けてくれていることには感謝の念すら生まれます。 。
このようなホテルの覚悟を見ると、サービス面でもお客様のことを考えてくれるのだろうなと感じ取ることが出来ます。
ホテルを選ぶときは是非、そういったホテルの持つ心意気も感じ取って欲しいなと思います。
④ 価格帯・立地
1泊:25,000〜40,000円
場所:箱根・小涌谷
⑤ 建築士としての総評
“建築が自然を編集し、癒しをつくる”というコンセプトが徹底された完成度の高い温泉宿。
ホテル<温泉宿の人にとってはこれ以上ない宿と言って良いでしょう。是非、自然の中の温泉を味わい尽くして欲しいです!
🏨 THE KEY HIGHLAND NASU(栃木・那須高原)
① ホテルの印象
自然に包まれた森の中に建ち、「滞在そのものがイベントになる」 オールインクルーシブ型リゾート。
ホテルに到着した瞬間に感じるのは、“森の静けさ”と“開放感”。
外観はガラス面が多く、周囲の森を大胆に取り込むデザインが施され、建物の存在感以上に「森のリゾートに来た」と身体で感じられるつくりになっています。
アクティビティの豊富さや賑やかさがありつつも、建物の雰囲気は落ち着いており、大人がゆったり楽しめる高原ステイとしての品格も備えているのが特徴です。
② 建築ポイント


到着してまず印象的なのが、森へと開いたロビー空間。
天井は過度に高くせず、適度な高さを保ちながらも、正面の大きなガラス窓から緑がドンっと入り込むことで“圧倒的開放感”をつくっています。
これは「高さ」ではなく、「抜け」で空間を広げる代表的な設計手法。
高さを競うロビーではなく、自然を室内に引き込む“横方向の広がり”を重視しており、落ち着きと雄大さをバランスよく両立させています。
入り口にあるエントランスキャノピーは、訪れた人に対して一瞬空間を狭く感じさせる圧縮の効果があります。
その後に中に入ると、中までスーっと通った空間により、圧縮とは反対の開放的な空間を味わうことが出来ます。

↑エントランスキャノピー:エントランス入り口の上にある庇のようなもの
外の自然で解放され、エントランスキャノピーで圧縮、その後エントランスの中で解放されるといった様に、入り口から心踊らせる仕組みが盛りだくさんなこのホテル。
ありきたりなホテルに飽き飽きしているあなたにはぴったりです!
また、廊下や共用部は直線的でシンプルな動線を貫いており、複数のアクティビティ施設へスムーズにアクセスできるよう計画されています。これは、子ども連れや大人数の移動が多いホテルにとって非常に重要。
「迷わない動線」「疲れない動線」は宿泊者満足度を大きく左右するため、リゾートホテルとしてかなり優れた設計だと言えます。

客室は、森に向けて視線が流れるよう窓の位置と家具配置が調整されており、滞在中ずっと自然と向き合える構成。
一般的なホテルと違い、「目に入ってくる緑の量」が圧倒的です。
空間心理学的には、人がリラックスできていると感じるためには緑視率が25%以上必要だとされています。普通のホテルなら緑の家具やアートを入れることで緑視率を高めるのですが、このホテルは本物の自然だけで優にその基準を満たします。
この贅沢な空間を客室から感じられるというのは本当に素晴らしく、今後人気が高まるだろうなと予想しています。普段疲れていて癒されたいと感じているのなら、価格が高くなる前に行っておくべきホテルの一つですね。
※緑視率:視界の中に “どれだけの割合で緑が見えているか” を数字で表したもの。
③ 温泉・施設(建築目線)

温泉は大きな森に向かって開く露天構成で、湯に浸かった時に目線が自然へ一直線に抜けるつくり。森の木々が適度にレイヤー(層)を成し、奥行きのある景観を生み出しています。
この“視線の奥行き”は、露天風呂で得られる癒しの質を高める重要ポイントです。
また、プール・ラウンジ・焚き火エリア・カラオケ・ビリヤードなど、複数の施設がホテル内に点在していますが、それぞれが違和感なく森の環境とつながる配置になっています。
特にナイトプールは、建物のガラス面に森の影が映り込み、照明の反射と相まって幻想的な雰囲気を演出。これは照明設計による演出力が高い証拠。
照明と音は建築の中でもトップレベルに難しいとされています。その理由は、人の数・温度・湿度・季節・天気など様々な要因によって大きく変動してしまうからです。
そこに真っ向から立ち向かい、時間の変化と反射を計算し演出に成功させているという点からもこのホテルのサプライズ心が読み取れます。
「自然 × アクティビティ × 光」の組み合わせでつくられる非日常性は、
“ホテルの中で一日が完結する”構成を建築的に最大化した成功例と言えます。
そんなサプライズ心を持ち、演出に成功しているホテルなら泊まってみたくなりますよね。
私は「贅沢さ」を「どう考えても楽しみ切る為には、時間が足りないと感じること」と定義しています。
その時間の足りなさに贅沢さを感じるという事です。
このホテルには自然を使って堪能できる施設・アクティビティが多く、まさに贅沢なホテルに当てはまります。一度それらがまとまった下記のページを見てみても面白いかもしれません。

④ 価格帯・立地
1泊:25,000〜40,000円前後(オールインクルーシブ)
場所:栃木県・那須高原(標高約1,000mの森の中)
高原エリアのため、夏は涼しく、冬は雪景色が楽しめる季節変化の豊かさも魅力。
⑤ 建築士としての総評
森の力を最大限に引き出し、建築が“自然を編集して心地よさをつくる”ことに成功したリゾート。
高さではなく横や奥への抜けを重視したロビー設計、視線誘導を丁寧に計画した客室・温泉、そして滞在動線の分かりやすさは秀逸。
「自然 × 遊び × 癒し」を建築でつなぎ合わせた、完成度の高いオールインクルーシブホテル。
携帯・パソコンで疲れた目を休めるためにも是非。
🏨 鬼怒川温泉 あさや(栃木・鬼怒川)
① ホテルの印象
最後に紹介するこちらのホテルは、是非電車と徒歩で訪れて欲しいホテルです。
更に指定して良いなら、是非雪の降った冬に訪れて欲しいホテルですね。
最寄りの鬼怒川公園駅からは徒歩15分程度ですが、ホテルは到着するまでの道のりも含めてのエンターテイメントです。ここまで「ホテルまでの道並みが楽しませてくれる場所」は珍しいです。
140年以上の歴史をもつ老舗旅館でありながら、館内は現代的で明るく、まるで“和モダンのテーマパーク”に足を踏み入れたような高揚感を味わえる温泉宿。
② 建築ポイント

まず感動をつくるのは、名物ともいえる 吹き抜け構造を大胆に活かした高さ約30mのアトリウムロビー。
天井まで伸びる光の柱と、階層的に広がる回廊が視線を縦方向に導き、鬼怒川温泉という地の空気に自然と包まれていくような設計になっています。
到着した瞬間に「ここに来て良かった」と思わせる“場の力”を持つホテルです。
徒歩で行けば尚更、、(笑)
一般的な温泉旅館のロビーとは一線を画し、縦方向への抜けが圧倒的。大規模なホテルだからこそできる強みを生かした空間構成となっており、ポッと出の小規模ホテルには到底真似できません。
ここでは“圧縮と開放”の開放部分を最大限に演出し、到着した人の心を一気に非日常へ切り替える仕組みになっています。
140年の伝統を感じさせる木の温もりと、堂々と置かれたグランドピアノ。ホテルを創る私にも「この歴史には敵わないな~」と感じさせてくれたのを覚えています。

客室は、構成によって世界観が大きく異なります。
特に秀逸なのは “渓谷側” の客室。
鬼怒川を見下ろす大開口が景色をひとつの額縁に見立て、
視線の先に川の流れと緑の層が自然と入り込むよう設計されています。

この「景色の切り取り方」は贅沢そのもので、
普段見えない“渓谷のダイナミズム”がそのまま客室体験を特別なものにしています。
THE KEY HIGHLAND NASU同様、自然だけで緑視率を高めている珍しいホテルです。他のホテルの緑視率の満たし方と比較してみて欲しいなと思います。
③ 温泉・施設(建築目線)

あさやを語るなら、最上階の空中庭園露天風呂 を外すことはできません。冒頭で冬をお勧めした理由もここにあります。
ここは、湯に浸かった“座位の目線”から最も美しい鬼怒川渓谷を切り取るよう計算されています。
山肌の角度・川の流れ・対岸の木々の重なり……
自然が描く立体構成をそのまま活かし、「視線の奥行き」 を最大化した露天風呂です。
この景色の中に雪吹雪が重なった状況を想像してみて下さい 。 。
言葉で表現するのが申し訳なくなるくらいの圧巻さ、贅沢さ。
一生思い出に残る情景とはこのことを言うのだろうなと無意識のうちに感じるはずです。カップルや夫婦で訪れたのなら、お風呂上りに話すのは間違いなくこの情景のことでしょう。
特に夕刻は、谷に沈み込む光がグラデーションとなり、想像を超える“光の演出”が生まれます。
これは、土地の地形を理解したうえで配置した露天風呂だからこそ得られる体験。
良い土地を昔から持っているという強みは、ランニングコストとしてお金がかかるものではないので、安く良いホテルを探すときのポイントです。
ポイントは「最近お金を掛けてゲットした土地」ではなく、「昔から持っていた良い土地」という点です。ここを見分けるのは難しいので、その辺はこのブログを読んで見つけてもらえればと思います!
もう一つ注目すべきは、大浴場と露天風呂の動線。
館内の複雑さを感じさせないよう、人の流れが自然に分散する設計です。
大型旅館は混雑しやすいイメージがありますが、
あさやはそれを感じさせない“動線コントロール”も秀逸です。
あさやに訪れた時は、「なんでここの浴場は混んでいるように感じないのだろう?」と少し考えてみて欲しいと思います!
④ 価格帯・立地
1泊:25,000〜40,000円前後(季節・プランにより幅あり)
場所:栃木県・鬼怒川温泉(鬼怒川温泉駅よりバス5分、徒歩15分)
アクセスが良い一方、渓谷側の景色は自然に深く入り込んでおり、
“都心とのギャップ”が一気に生まれる立地です。
⑤ 建築士としての総評
歴史ある旅館建築を、現代の照明・動線計画で再整備し、
「伝統 × 近代デザイン × 鬼怒川渓谷の自然」
を見事に融合させた温泉宿。
特にアトリウムロビーと屋上の空中庭園露天風呂は、
建築が生み出す“劇的な高揚感”と“深い癒し”を体験させてくれる名作です。もし、心に残るホテル、また行きたいと思わせてくれるホテルに出会ったことのないと感じているのなら、その一歩目にはもってこいです。
最後に、 、
今回は関東の温泉宿の中から厳選してご紹介しました。自然だけで緑視率25%を満たすホテルが2つもあったので、それが普通と感じる方もいたかもしれませんが、本当にこだわったホテルだからこそ実現できる稀有なことです。
大前提、私が泊まりたいと思わないホテルは紹介していませんし、建築的・建築心理学的に分析して、非日常を味わわせてくれる感動的なホテルと判断できなければ紹介していません。
旅行比較サイトの溢れた現代ですが、是非様々な視点から比較し、本当に良いホテルに泊まってもらいたいと思います。
それでは、良い関東温泉宿ライフをお過ごし下さい!